訪問看護師の仕事内容や給料を解説
記事掲載日:2020/08/27
2025年には、日本国民の4人に1人が後期高齢者(75歳以上)となり、超高齢社会になります。いわゆる「2025年問題」ですが、このような社会では病院や施設に入れない高齢者の方も増加するため、在宅療養や在宅看護のニーズが拡大します。
そのため住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体で提供される地域包括ケアシステムの構築が進んでいます。訪問看護ステーションで働く看護師は、そのような社会課題の解決としての役割を担い、一人ひとりに寄り添いながら職責を果たしていくやりがいのある職業と言えるでしょう。
この記事では、訪問看護ステーションの特徴や看護師に求められる役割、具体的な業務内容やメリットや注意点を紹介します。訪問看護ステーションに興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
訪問看護ステーションとは?
訪問看護ステーションは、患者さまが住み慣れた自宅でも療養生活を送ることができるように看護師や保健師、ケアマネージャー、理学療法士などの医療専門職がかかりつけ医師と連携をとって心身の回復をサポートするサービスです。
患者さまが要支援介護状態の場合には、介護支援専門員がケアプランの作成や要介護認定申請の指導などを行います。訪問看護は、医療保険の場合は週3回が限度で、1回の訪問時間は1時間30分以内と決まっています。介護保険の場合は、居住サービス計画によって訪問日数や時間が異なります。
増加する訪問看護ステーション
一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、日本全国の指定訪問看護ステーションの数は、2010年より増加しています。2010年には5,731カ所でしたが、2015年には8,241カ所、2021年には13,003カ所と、ここ10年間でその数は約2.5倍になっています。
日本の医療と介護が大きく変化していくなか、看護師の皆さんがこれからのキャリアアップや働き方を検討する上で訪問看護は有力な選択肢となってきます。
▼参考資料はコチラ
一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和3年度 訪問看護ステーション数 調査結果」
訪問看護師の仕事内容と役割
訪問看護師は、訪問看護ステーションのほか、病院やクリニックなどに在籍して、地域で在宅医療を支えていきます。基本的にはケアマネージャーが作成した「居宅サービス」や主治医が作成した「訪問看護指示書」をもとに訪問看護を実施します。では、具体的な訪問看護の仕事内容を紹介します。
健康状態の観察・管理
体温、血圧、脈拍などの測定や持病の状態確認などを行います。
ご家族の支援・相談
利用者だけではなくご家族の支援も大事な業務です。超高齢社会では老老介護も増加しているので、困りごとや悩みの相談にのり、適切なアドバイスをします。
医師の指示に基づく医療処置
カテーテル交換、インシュリン注射、点滴から服薬管理、人工呼吸器など医療機器の管理などを行います。
日常生活のサポート
食事・排せつ、入浴などの介助から体位変換、褥瘡防止、栄養指導、外出訓練などがあります。
認知症と精神疾患のケア
服薬指導や認知症、精神疾患の方への対応に関するアドバイスをご家族に行います。
リハビリ
身体機能の回復のためのリハビリを行います。
ターミナルケア
在宅での看取りとご家族へのケアを行います。
訪問看護師の役割は、かかりつけ医師の指示書に基づいた医療処置、日常生活のサポート、患者さんとその家族の精神的なケアです。具体的な仕事内容には、体温・脈拍・血圧測定、カテーテル交換、インシュリン注射、点滴、痛みのコントロール、食事・排せつサポート、褥瘡防止、服薬・栄養指導、歩行訓練、入浴・外出訓練などがあります。
訪問看護を受ける患者さんは乳幼児から高齢者まで幅広く、診療科は内科だけでなく、精神疾患、整形外科リハビリ、がんのターミナルケアなど多岐にわたるため、様々な年齢の患者さんと接することができるコミュニケーションスキル、幅広い診療科に対応できる能力が必要です。
訪問看護師のメリットややりがい
訪問看護ステーションで働くメリットややりがいはどのようなものでしょうか?
柔軟な働き方ができる
訪問看護ステーションは、「日勤のみで夜勤なし、土日休み」という施設が多いので生活のリズムを整えやすい環境です。また、午前中のみ勤務や週3回勤務など柔軟に働くことができる場合が多いので、子育て中の人や家族の介護中の人にも働きやすい職場といえます。訪問看護は1人で訪問先の患者さまに対応するため責任は大きいですが、夜勤なしでも報酬が高めというのも魅力です。
1人の患者さまとじっくり向き合える
訪問看護は病院看護師と異なり、一人ひとりの患者さまと長期にわたって関わります。訪問看護では1日に4件から5件訪問するため、「患者さまやその家族としっかりかかわっていけるのが看護師としてのやりがい」と考える看護師に向いていますし、地域に根付いての活動となるため、社会的意義を強く感じることができます。
在宅医療のキャリアを磨ける
超高齢社会は避けては通れない未来です。今後は在宅医療や地域医療の需要が高まります。訪問看護で在宅医療や地域医療の経験を積んでキャリアを磨くことで、将来の働き方やキャリアの幅を広げることができるでしょう。
訪問看護ステーション勤務の注意点
訪問看護ステーションで働く注意点をご説明します。
看護師1人にかかる負担が大きい
訪問看護では看護師が1人だけで患者さまや家族と接することになります。何か分からないことがあったときにすぐに同僚や先輩看護師に相談することができないため、幅広い知識と臨機応変な対応力が求められます。すべて1人で仕事を行うことにやりがいを感じる人には訪問看護は向いていますが、1人での仕事がプレッシャーに感じてしまう人は病院やクリニックで働く方がおすすめです。
オンコール体制のある訪問看護ステーションもある
訪問看護ステーションによってはオンコール体制があることがあります。オンコールは手当てがつくことが多いですが、オンコールがあると休日や夜間ゆっくり休めないと感じる人は、オンコールがない訪問看護ステーションで働くようにしましょう。
コミュニケーション能力や適応能力が求められる
訪問看護では1人の患者さまと長くじっくり付き合っていくことになります。病院看護師よりも患者さまやその家族と深い付き合いが必要となるため高いコミュニケーション能力が求められます。
訪問看護を受ける患者さまは乳幼児から高齢者まで幅広く、その理由も様々です。患者さまそれぞれの状況を理解するコミュニケーションスキルがあれば重宝されるでしょう。また環境が整備された病院とは異なり、利用者の生活の場で看護をすることになります。加えて、多職種間での連携も必要となりますので、病院とは異なるコミュニケーションが求められます。
訪問看護師の給料事情
続いて、訪問看護サービスで働く看護師の給料事情を見ていきましょう。
ナースステップで東京都の訪問看護サービスの求人を調査したところ、月給は23~50万円と幅が広くなっており、オンコールや時間外訪問の有無によって変動があります。もっとも多い給与下限が27〜28万円で、上限は管理業務経験の有無によって変わります。おおよそではありますが、年収換算で330~600万円ほどが相場です。
夜勤がない職場がほとんどでワークライフバランスを実現しやすい環境では、比較的高い給与を期待できそうです。
訪問看護師はこんな人におすすめ!
患者さまの生活に密着した看護に興味がある人、「夜勤なし、土日休み」など柔軟な働き方をしたい人、患者さま一人ひとりと長期にわたってじっくりかかわりたいと考えている人には訪問看護師はおすすめです。
以前までは訪問看護経験を有していることを条件とした求人が多くなっていましたが、冒頭の通り、現在訪問看護の需要は高まっており、未経験の方でも応募可能な求人が増えてきています。
まとめ
訪問看護ステーションの特徴、仕事内容、メリットや注意点をご説明しました。
訪問看護ステーションは看護師1人にかかる負担は大きいですが、「夜勤なしでも報酬が高め」、「働き方を柔軟に選べる」、「患者さまとじっくり向き合える」というメリットがあります。
訪問看護ステーションによって夜勤やオンコールがあるところもありますので、後悔をすることのないよう、事前にしっかりと調べてから転職しましょう。
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