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在宅看護の実践で大切なこととは?心構えや考え方を解説

記事掲載日:2022/07/21

在宅看護の実践で大切なこととは?心構えや考え方を解説

日本の高齢化は深刻であり、今や超高齢社会です。

総務省の令和2年度国勢調査によると、65歳以上の人口は総人口の28.4%に達しています。

高齢者が増える中、療養をする場の確保が困難になり在宅医療の需要は増えていく一方です。したがって、看護師にはこれまで以上に在宅医療での活躍が求められるでしょう。

今回は在宅看護の実践において、念頭に置いておくべき心構えや考え方などの大切なことを紹介していきます。

▼参考資料はコチラ
『令和2年度国勢調査』

    1.利用者・家族の自由な生活を前提とする

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    訪問看護における看護師の役割は、病院内での役割と異なります。

    病院では看護計画を立て、患者さまの病気の回復に向けた看護実践や、褥瘡予防・ケアなど症状に応じた対応が必要です。

    しかし訪問看護で重要なのは、「利用者と家族の自由な生活」です。

    通常、看護師は「誤嚥性肺炎の予防のためこの食べ物は避けるべき」、「リハビリのために散歩をするべき」など病気を中心に看護を計画する傾向にあります。しかし在宅の場においては、治療よりも先に「自由な生活」を優先するため、生活の中に制限を強いてはいけません。

    看護師が自由な生活を送っている利用者に対して制限を強いると、看護師に対する不信感に繋がるうえ、看護を受け入れてもらえなくなる場合もあります。

    例えば、運動が苦手な利用者を生活習慣の改善のために運動が必要だからといきなり外に連れ出すのは、利用者の自由な生活を侵害していることになるでしょう。

    利用者の生活においてなぜ運動が必要なのか、必要性を受け入れてくれるならば今の生活のどこに取り入れられるのかなど、利用者と十分な話し合いが大切です。

    2.家族も対象とした看護が必要

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    看護師が訪問看護サービスを契約する相手は利用者個人です。しかし、その周りにいる家族の存在も看護の対象になることを念頭に置かなければなりません。

    在宅における看護の提供はもはや個人への看護ではなく、家族という単位で看護すると考えると良いでしょう。

    なぜなら、利用者本人が抱えている問題が家族との相互作用によって引き起こされている場合もあり、反対の場合もあるからです。

    例えば、うつ病で家に引きこもりがちな利用者の事例をあげます。家族はいつも看護師に丁寧な応対をしてくれますが、利用者本人に話を聞くと「外は怖いところだから出かけてはならない」と言われていたという事例です。

    こういった事例から、介入しなければならないのは利用者本人だけではないことがよくわかります。

    もう一つの例として、認知症の利用者の家族がこれまでの被害妄想等の症状から利用者本人と関わりたくないため距離を置いており、家族関係が悪化しているケースもしばしばみられます。

    このような場合では、地域連携や社会福祉サービスの提供など社会福祉面からの看護も必要です。

    3.利用者の自立を促す

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    看護において患者さまの自立を促すことは重要だと常々言われるものの、在宅看護では状況が異なります。

    病院で入院している方は失った機能の回復を目指して自立を促すことが多いですが、在宅看護では認知症の高齢者など機能の回復が難しいケースが多いのです。

    そこで、在宅看護において看護師に必要となる考え方が「ストレングスモデル」です。利用者の持つストレングス、いわゆる強みを活かして自立を促すことが、在宅看護では重要になります。また、そのストレングス自体を利用者と一緒に見つけていくことも、在宅看護の一環と言えるでしょう。

    4.利用者の状態を鑑み、柔軟な対応をする

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    在宅看護の場では、ガイドライン通りにいかないことがしばしばあります。

    例えば、褥瘡ケアが必要な患者さまがいたとします。看護師は本来ならば褥瘡予防・管理ガイドラインにあわせて、2時間ごとの体位交換をするのが一般的です。しかし実際は、看護師が利用者のケアに携わることができる時間は1日の中でほんの僅かで、さらに土日祝日などの休日もあり毎日訪問するわけではありません。

    そして、2時間ごとの体位交換という計画を立てたとしても、利用者の家族にも生活があります。日常生活の中で2時間ごとの体位交換を継続的に行うことは困難でしょう。

    こういった場合に、看護師は利用者の状況を鑑みて柔軟な対応をしていく必要があります。2時間ごとの体位交換は困難であっても、家族が対応できる時間を決めてカレンダーを貼っておくなどの対応を、利用者・家族とともに検討すると良いでしょう。

    また、家族の方の経済状況に合わせて物品を選ぶなど、コスト面や利便性を考える必要もあります。例えば病棟のような洗浄用のボトルは家にはありません。しかし、家にある余ったペットボトルを代用することでコストの削減も可能です。

    様々な面で柔軟な思考が求められるのが在宅看護の現場です。

    5.利用者の尊厳を守る

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    在宅看護において重要な役割に「利用者の尊厳を守る」ことがあげられます。

    在宅看護の利用者は子どもや高齢者、障がい者など自分の意思をうまく伝えられない方が少なくありません。

    在宅看護では利用者を相手にしているにもかかわらず、利用者の家族を中心に契約の説明をしていたり、利用者の意思を汲みとれないまま家族にサインを求めたりする場面も目にします。しかし本来ならば、利用者が子どもならプレパレーションを実施したり、高齢者には大きな声で話をしたり、また障がい者にはわかりやすい言葉を選択して会話をするなどの対応を検討するべきでしょう。

    在宅看護を実践する際には、利用者自身の尊厳を守ることができているのか、常に確認する必要があります。

    6.チームケアの役割意識を持つ

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    在宅での利用者のケアは、「チームで行う」意識を持ちましょう。

    そもそも、1つの専門職の思考だけではなく多種多様な専門家が集まり多角的な視点でケアを提供することが、チームケアの目的です。

    在宅看護では医療ケアだけではなく、ケアマネージャーや医療ソーシャルワーカーなどとの連携による社会福祉面でのサポートも欠かせません。

    そういった多角的なサポートが重要な在宅看護には、チームケアが必須です。

    チームケアの中で看護師は、利用者の情報を多く保有しているという点から、情報提供や多職種連携の役割を担っています。

    今後、在宅で療養する利用者が増えると予想されます。看護師として、ご自身がチームケアの中でどういった役割なのかを意識しながら働くことが、さらに重要になるでしょう。

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    多職種連携における看護師の役割とは?

    まとめ

    在宅看護は、病院の中での看護とは大きく異なります。

    在宅看護では利用者の自由の優先が重要であり、看護師の柔軟な思考が必要と言えるでしょう。加えて、チームケアの意識も特に重要です。

    病院内でも多職種連携が必要な場面はあります。しかしそれ以上に在宅の場では、看護師が主体的に連携のために動いていかなければなりません。

    利用者のそばにいて、利用者の抱えている問題に一番に気づくのも看護師であることが多いです。そして、その問題の解決に医療的なケアではなく、社会福祉面でのケアが必要な場合も少なくありません。

    したがって、チームケアの意識を持ち主体的に周りに働きかけられる看護師が、在宅看護で利用者のニーズに応えられる看護師だと言えます。

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