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多職種連携における看護師の役割とは?【必要な理由・行うメリット・大切なこと】

記事掲載日:2022/05/31

多職種連携における看護師の役割とは?【必要な理由・行うメリット・大切なこと】

近年、「多職種連携」は医療や介護の現場などで欠かせません。連携する中で、看護師が果たす役割は重要なものです。この記事では、多職種連携で看護師にどのような役割が期待されているのか詳しくご紹介します。多職種連携において大切なことやメリットなども解説するので、ぜひご参考にしてください。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省『地域包括ケアシステム』

多職種連携とは

多職種連携とは

多職種連携とは、質の高い医療サービスの提供を目指し、異なる職種のスタッフが各々の専門性を活かしながら同一の目標に向かった連携を指します。

もとは医療分野での専門職同士が連携することを指しました。しかし、近年ではNPO法人の職員やボランティア団体のメンバーなども、多職種連携の対象として含まれています。メディカルチームに限らず、さまざまな職種との連携・協力が重視されるようになりました。

多職種連携と地域包括ケアの関わり

地域包括ケアシステムとは、介護が必要な状態になっても、慣れ親しんだ地域でその人らしく暮らせるよう高齢者をサポートすることです。「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」を一体的に提供できるような環境の構築を目指します。

団塊の世代が75歳以上を迎える2025年以降、医療・介護の需要増加、またニーズの幅の広がりが予想されています。2025年以降も、地域包括ケアシステムを実現していくために欠かせないものが多職種連携です。

多職種連携により、あらゆるサービスが相互に関わり合うことで、高齢者の方の生活を支える必要があります。

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地域包括ケアシステムで看護師に求められる役割とは

多職種連携の必要性

  • 患者さまの幅広い医療ニーズに応えるため
  • 質の高い医療・看護ケアを提供するため
  • 多職種が持つ専門知識を互いに補い合うため
  • 患者さまのケアにはさまざまな職種やサービスが関わっています。職種同士の連携がなぜ必要とされているのか、以下で詳しく説明します。

    患者さまの幅広い医療ニーズに応えるため

    多職種連携により、患者さまごとの幅広いニーズにも対応できます。患者さま一人ひとり、必要とする医療のニーズは異なるものです。

    たとえば、在宅療養を希望する患者さまは、多職種連携により訪問看護や訪問介護の利用ができます。また、それと同時に在宅療養を支えるご家族のサポートが必要になった場合、デイサービスやショートステイの利用が役に立つケースもあるでしょう。

    患者さまを支えるにはさまざまなサービスが求められるため、複数の職種が連携する必要があります。

    質の高い医療・看護ケアを提供するため

    多職種連携により、質の高い医療・看護ケアを提供できます。慣れ親しんだ地域でその人らしい生活を送ってもらうためには、一人ひとりに適した医療サービスや、看護ケアの提供が必要です。

    その場合、それぞれの専門職が持つ専門性を発揮して、質の高いサービスを提供することが欠かせません。また、各専門職が患者さまの情報を共有し、目的を統一して支援を行えるため、より質の高いケアが実現できます。

    多職種が持つ専門知識を互いに補い合うため

    違う視点を持つ専門家が集まることで、多角的な視点で物事が把握できます。それぞれの職種は、専門性や働くフィールドが異なるものです。

    日本看護協会は、倫理観の相違は連携における課題であると指摘しています。しかし一方で、立場や考え方が違う点こそが、多職種連携が重要かつ効果的である大きな理由です。

    また、医師や看護師などのメディカルチームだけではなく、医療ソーシャルワーカーやケアマネージャーなどの社会福祉の視点を交えれば、包括的なケアが実現できます。

    ▼参考資料はコチラ
    日本看護協会『多職種連携と倫理』

    多職種連携における看護師の役割とは?

    多職種連携における看護師の役割とは?

  • 他職種に患者さまの情報を提供する
  • 他職種間を取りもち調整する
  • 患者さまやご家族を多面的にサポートする
  • 多職種連携において、看護師に期待される役割は幅広く、またいずれも重要です。ここでは、多職種連携において看護師はどのような役割を担うのか詳しく説明します。

    他の職種に患者さまの情報を提供する

    看護師は、患者さまと関わるうえで得た情報を、他の職種に伝える役割を担います。医療現場で、患者さまと関わる機会がもっとも多いのは看護師だからです。

    この役割を果たすためには、患者さまやご家族と関わる中で、相手をよく観察し、些細な変化に気づく必要があります。患者さまの体調・心理状態、またご家族に関する情報などを医師や介護スタッフに伝えるという看護師の役割は、多職種連携の要ともいえるでしょう。

    他職種間を取りもち調整する

    看護師はさまざまな職種と関わる機会が多いため、他職種同士をつなぐキーパーソンの役割をもちます。仲介役として、他の職種から出た意見を別の職種に伝えることが、看護師が多職種連携するうえで重要です。

    また、職種間で意見や見解が一致せず、難しい問題に直面する場合には、看護師が問題解決に向けて意見を調整し全体をまとめていく必要があります。

    患者さまやご家族を多面的にサポートする

    患者さまやご家族と関わる時間の多い看護師は、医師の説明が足りない時に補足のお話しをすることがあります。病気やケアに関しての説明だけでなく、ときには患者さまやご家族が抱える精神的な不安・悩みに寄り添うのも、看護師の役割です。

    心身ともに患者さまを支え、幅広いサポートを行うことを心がけましょう。

    多職種連携が必要とされる看護師の主な職場

  • 病棟
  • 介護施設
  • 在宅看護
  • 看護師の職場の中で、多職種連携がとくに必要とされる働き先は主に上記の通りです。実際に、どのような場面で連携が必要とされているのか以下で詳しく紹介します。

    病棟

    病棟勤務の看護師は、主に入院中の患者さまの治療・ケアを行ううえで、多職種との連携を行います。医師や理学療法士、薬剤師、管理栄養士などとカンファレンスを開き、患者さまの治療方針や退院に向けケアの内容を決めるのが、主な連携の場です。

    勤務先によっては、「褥瘡管理チーム」「緩和ケアチーム」などチームが組まれているケースもあります。この場合、チームの専門領域に特化した業務に対応し、患者さまのケアを行うのが一般的です。

    【病棟における看護師の多職種連携の具体例】

  • 主に医師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士と連携する
  • カンファレンスで患者さまに提供するケアの内容を話し合う
  • 専門領域ごとにチームが組まれる場合もある
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    介護施設

    介護施設で働く看護師は、主に介護士やケアマネージャーなどとの多職種連携を行います。
    介護施設では、介護士と看護師の役割分担が重要です。ご利用者さまの身体介助などは介護士が対応し、医療行為は看護師が対応します。

    ご利用者さまの日常生活での様子など、看護師が得られない情報は、介護士に共有してもらうのが大切です。

    また、ご利用者さまのご家族とコミュニケーションを取ったり、ご家族の意向を伺ったりする業務も欠かせません。その後、伺ったご家族のご意向をケアプランに反映させるために、ケアマネージャーに共有しましょう。

    【介護施設における看護師の多職種連携の具体例】

  • 主に介護士、ケアマネージャーと連携する
  • 介護士から利用者の日常生活について情報をもらう
  • ご家族のご意向をケアマネージャーに伝える
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    在宅看護

    在宅看護に対応する訪問看護師は、主に、医師や病院看護師、ケアマネージャーや訪問介護員などと連携を行います。在宅看護の際、患者さまに病状の変化があれば医師に報告することが必要です。

    入院していた患者さまが退院後に在宅看護を利用する場合は、入院中の様子などを把握している病院看護師と連携を行うのも欠かせません。また、患者さまがデイサービスも同時に利用している場合は、訪問介護員と連携することもあります。

    【在宅看護における看護師の多職種連携の具体例】

  • 主に医師、病院看護師、ケアマネージャー、訪問介護員と連携する
  • 患者さまの病状を医師に報告する
  • 病院看護師に、患者さまの入院中の様子を聞く
  • 患者さまのデイサービス利用時に訪問介護員と連携する可能性もある
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    多職種連携を行うメリット

    多職種連携を行うメリット

  • 患者さま・ご家族のニーズに沿ったケアができる
  • 患者さま・ご家族の安心感につながる
  • 治療や看護ケアの質の向上につながる
  • 看護師としての専門知識が深まる
  • 多職種連携を実践すれば、患者さまやご家族の意思を尊重し、幅広いニーズに合わせたケア・サービスが提供できます。また、看護師や医師、ケアマネージャーなど、さまざまな職種が専門性を持ち寄ることで、お互いにカバーし合えるのもメリットです。これにより、患者さまへ質の高いケア・サービスを受けていただけます。

    さらに、多職種連携を通して知識が増えると、看護師としての視野が広がり専門性を磨いていけるでしょう。

    患者さまにとって住み慣れた環境で治療やケアを受けられることは、安心感につながるものです。多職種連携を通して、質の高い地域包括ケアを実現しましょう。

    多職種連携が抱える課題

  • 専門性を高める研修や教育の機会が少ない
  • 連携を行う十分な時間が捻出できない
  • 連携を行う体制が整っていない
  • 多職種連携によってケア・サービスの質を高めるためには、それぞれの職種が高い専門性を持つことが重要です。看護師としての専門的な知識・技術が不足している場合、よりよいケア・サービスの提供はできません。

    そのため、一人ひとりが専門性を高めるため、研修や教育など学びの場を充実させる必要があります。

    また、各職種がそれぞれの業務を行いながら、多職種連携のための時間を別で作らなければいけません。時間が限定されるため、十分な連携の機会を持ちにくいデメリットがあります。この対応策として、ICTを活用するなど、連携を無駄なく・円滑に進める体制を整えましょう。

    【看護師向け】多職種連携で大切なこと

    【看護師向け】多職種連携で大切なこと

  • 多職種同士で尊重し合う
  • 達成すべきゴールを共有する
  • 看護師の役割を明確にし、専門性を高める
  • コミュニケーションを密にとる
  • 多職種連携では、異なる分野での専門家同士がコミュニケーションを取るため、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。以下の4点に気をつけることで、連携をスムーズにとれるでしょう。

    多職種同士で尊重し合う

    さまざまな職種が連携し合ううえでは、お互いの意見を聞き入れ、尊重する姿勢が大切です。他職種に対する理解を深め、互いに尊重する姿勢を持ちましょう。

    時には職種間で意見がぶつかることもあります。意見がぶつかったときに一番大切なのは、患者さまやご家族が中心であると思い返すことです。患者さまにより良いケアを提供するためには、自分以外の立場に立って考える必要があります。

    達成すべきゴールを共有する

    多職種連携では、最終的な目標は何か共有しておくのが大切とされています。各職種が連携して終わりではなく、患者さまやご家族にとって一番よいケア・サービスを提供するのがゴールであるためです。

    患者さまやご家族のための目標を共有し、ゴールを統一すれば、同じ方向性を持ってケア・サービスに取り組めるでしょう。

    看護師の役割を明確にし、専門性を高める

    チームの中で役割を発揮するには、看護師として何ができるか把握し、専門性を活かせる部分でスキルを発揮するのが重要です。職種ごとの役割を正しく理解し、自分の専門以外の業務は他職種に頼るようにしましょう。

    また、看護師としての役割を全うするためには、専門性を磨く必要があります。研修に参加するなど、看護についての新しい知識や技術を学び、業務に活かす姿勢を持ちましょう。

    コミュニケーションを密にとる

    多職種連携のためには日頃からコミュニケーションを円滑に、積極的に行うことが重要です。
    多職種連携によって患者さまやご家族にサービスを提供する場合、看護師や介護スタッフ、医師などさまざまな職種が関わり合うことになります。
    連携が取れていないと、患者さまの小さな変化に気づけないため、少しでも気になる点があれば、タイムリーにコミュニケーションをとっていきましょう。

    質の高いケアのため、多職種連携で看護師の役割を発揮しましょう

    多職種連携により、患者さまやご家族にとってより良いサービスが提供できます。常に患者さまのそばで関わることの多い看護職は、多職種連携のキーパーソンです。チームの中で看護師としての役割を発揮するには、他の職種が持つ役割をよく理解したうえで、自身の専門性を高める必要があります。

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    他職種とうまく連携し、看護師としてのやりがいを感じながら働きたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。