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看護師の退職金の相場は?10年30年でどう変わる?後悔しないために知っておきたい病院の選び方

記事掲載日:2023/06/13

看護師の退職金の相場は?10年30年でどう変わる?後悔しないために知っておきたい病院の選び方

看護師はいくらくらい退職金をもらえるのでしょうか。どのような基準で決まるのか、そもそも退職金は必ず支給されるのか、気になる方は多いはず。今回は、看護師の退職金の相場を勤続年数や勤務先別でご紹介します。退職金の計算方法のほか、退職金で後悔しないための病院選びも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

看護師は必ず退職金がもらえるもの?

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看護師に関わらず、退職金は必ず支払われるものではありません。退職金制度はすべての企業に必ずあるわけではないため、勤め先の病院やクリニックによっては支給されない場合もあります。

ただし、厚生労働省の「平成30年 就労条件総合調査」によると医療・福祉業界において退職金制度を用意している企業は87.3%。実際には、ほとんどの企業が退職金を支給しています。

自分の勤め先が退職金制度を導入しているかどうかは、就業規則で確認してみましょう。退職金制度を導入する場合には、就業規則に退職金の計算方法や支払い方法、時期などについて定めることが義務付けられています。

第九章 就業規則(作成及び届出の義務)
第八十九条 三の二
退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

引用:労働基準法

退職金制度の種類

退職金制度は大きく分けて3種類です。企業によって採用している制度が異なります。3つの制度のいずれかひとつ、もしくはこれらを組み合わせて取り入れている場合などさまざまです。

退職一時金制度

「退職一時金制度」は、退職時にまとまった金額を一括でもらえる制度です。厚生労働省が行った 平成30年の調査によると、医療・福祉業界で退職金制度がある企業のうち、退職一時金制度をとっている企業は96.2%、退職一時金制度のみを採用している企業は88.6%とあります。

産業全体で見ても、退職金制度がある企業のうち91.4%の企業が退職一時金制度を導入。退職金一時制度は、医療・福祉業界をはじめ多くの企業で採用されています。

企業年金制度

「企業年金制度」は、それぞれの企業が独自に用意している年金制度です。福利厚生としての年金制度ですが、税制優遇を考えて一括での受給を選ぶ人が多いため、実質的には退職金の一部と考えられています。

厚生労働省の調査によると、医療・福祉業界の退職金制度がある企業のうち、企業年金制度を採用しているのは11.4%、企業年金制度のみを採用している企業は3.8%とありました。企業年金制度は、とくに中小企業に負担が大きい制度であるため、退職一時金制度よりも採用率が低い傾向にあります。

前払い制度

「前払い制度」とは、在職中に退職金を支払う制度。多様化する働き方に合わせて普及した新しい退職金制度です。

通常、退職金はその従業員が退職する際の基本給や勤続年数などに応じて支払われます。それを従業員の在職中に、給与やボーナスに上乗せして支払うのが前払い制度の仕組みです。

企業は高額な退職金を一括で用意するリスクを避けられ、従業員は月々の給与が高くなるといったメリットがあります。

【勤続年数別】看護師の退職金の相場

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退職金制度がある病院やクリニックでは、勤続3年目から退職金が支払われることが多いようです。看護師はスキルが重要視される職業。多くの場合、勤続年数によって退職金の金額が異なります。

ここでは、勤続年数別に看護師の退職金の相場をご紹介。勤め先の病院やクリニックにより金額は前後しますが、目安として参考にしてください。

3年

退職金の相場:約20〜30万円

勤続3年目の看護師の退職金は、給与の約1ヵ月分といわれています。

3年目の看護師は、ようやく1人前に仕事ができるようになる時期です。病院への貢献度が非常に高いとはいえないため、中には退職金の支給がない場合もあります。3年目で退職する場合は、あまり退職金に期待しない方が無難でしょう。

5年

退職金の相場:約50万円

看護師5年目になるとリーダー業務や委員会活動などを行うようになります。病院によっては、新人看護師や後輩看護師への指導も担当するかもしれません。病院への貢献度がやや高まるため、退職金の金額も上がります。

勤続3年目までは退職金がない可能性もありますが、勤続5年目になると支給されることがほとんどです。転職を考えるなら、3年目以降の退職金が支給されるタイミングが賢明といえるでしょう。

10年

退職金の相場:約250〜300万円

看護師10年目は、専門学校を卒業した場合でも30歳を超える年齢になり、病棟やチーム内の役職に就く人も出てくる時期です。より責任が大きい仕事を担当するため、勤続3年目や5年目に比べると一気に退職金の金額が上がります。

また、勤続10年目の頃は、結婚や出産などによって転職や退職を考える人が多くなる時期です。まとまった金額を受け取れる可能性が高いので、出産や育児の資金、スキルアップの勉強資金に回すことができるでしょう。

20年

退職金の相場:約450〜600万円

勤続20年目を迎えると、ベテラン看護師の域に入ります。退職金も多くなりますが、育児などによるキャリア中断があるか、役職についているか、などによって支給額に幅が生まれるでしょう。

中途入職の人は定年退職が目前の時期です。定年退職の前に自己都合退職すると支給額が大幅に減ってしまう可能性があるので、転職や退職したい人は慎重な判断が必要です。

30年以上

退職金の相場:約1,000万円

勤続30年目の看護師となると、退職金の相場は1,000万円を超えてくるといわれています。

新卒で入職した看護師でも50代以降になるため、管理職に就く人が多いでしょう。看護師長や看護主任になると責任が大きくなる分、退職金の支給額も増えます。

勤続30年目ともなると、定年退職まで同じ勤務先で働き続けた方がより多くの退職金を受け取れるでしょう。

【勤務先別】看護師の退職金の相場

看護師の退職金は、勤務先の規模によっても異なります。病院の規模が大きくなるほど、退職金の支給額は増える傾向に。ここでは、国立病院、公立病院、私立病院の退職金の相場をご紹介します。

国立病院の場合

退職金の相場:約1,800万円

国立病院に勤める看護師が定年退職した場合、支払われる退職金の相場は約1,800万円と高めです。退職金の支給対象は、看護師として6ヵ月以上の勤務歴がある場合のみ。退職金の支給に関しては、独立行政法人国立病院機構の「職員退職手当規定」に細かく記載されています。

国立病院勤務の看護師は、2015年4月まで準公務員とみなされていました。制度が変わったものの、現在も当時と同じ水準で退職金を支給している病院が多いため、金額が高い傾向が続いています。

なお退職金の金額は、退職理由によっても変動。自己都合退職のケースだと、1年目で基本給の約半分、5年目で約2.5ヵ月分、20年目では約19ヵ月分が支給されます。

公立病院の場合

退職金の相場:約1,400〜1,900万円

公立病院に勤める看護師の退職金相場は、その病院がある自治体によって異なります。一般的に、財政が安定しているとされる政令指定都市の公立病院は、退職金の支給額が高い傾向に。比べて、都道府県立や市町村立の公立病院はやや金額が低い場合が多いです。

県立・市立病院に勤める看護師は地方公務員に該当。よって、「国家公務員退職手当法」に準じて退職金が支給されます。

私立病院の場合

退職金の相場:約800〜2,000万円

私立病院の場合、看護師の退職金はその病院の運営状況・方針によって大きく変わります。規模の大きな病院であっても、経営が芳しくなければ退職金が少ない可能性も。

中には、退職金を低く抑える代わりに給与を高く設定しているケースもあります。退職金の支給額については、その病院の就業規則や経営状況などを確認しておくとよいでしょう。

看護師の退職金を計算する方法

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看護師の退職金の計算方法は、病院の規模や経営状況によってさまざまです。ここでは、基本給ベース、固定給ベース、勤続年数ベース、功績倍率ベースで計算する方法を解説します。目安として参考にしてみてください。

基本給ベース

基本給×勤続年数

基本給ベースとは、退職時の基本給に勤続年数をかけて退職金を算出する方法です。退職金の計算でとくに一般的な方法とされています。

たとえば、退職時の基本給が25万円で勤続10年目なら、退職金は250万円です。計算に用いられるのはあくまで基本給なので、その他の手当は含まれないことを注意しておきましょう。

固定金ベース

固定金×勤続年数

固定金ベースは、職場が独自に設定した固定金額に勤続年数をかけて退職金を算出する方法です。たとえば、固定金が20万円で勤続20年目の看護師であれば、退職金は400万円になります。

固定金ベースの場合、退職金は固定金に大きく左右されます。昇給したり役職についたりしても退職金には反映されないので、注意が必要です。

勤続年数ベース

勤続年数ベースとは、勤続年数に応じて退職金の支給額を決定する方法です。たとえば、勤続5年以上なら100万円、勤続10年以上なら200万円などのように決まっています。

勤務年数に応じた退職金の支給額は、病院やクリニックなど施設ごとに異なります。

功績倍率ベース

基本給×勤続年数×功績倍率

功績倍率ベースは、基本給ベースの計算式に功績倍率を乗じる方法です。功績倍率は職場にどの程度貢献しているかによって決まるもので、「1」を基準としています。

たとえば、基本給30万円の勤続25年目の看護師が、プラスの評価を受けて「1.2」の功績倍率だった場合、退職金は900万円です。評価によっては功績倍率が1を割る可能性も。

評価によって金額が変動するため、仕事のモチベーションが上がりやすい算出方法といえます。

看護師の退職金を増やす方法

看護師が退職金を増やす方法は大きく分けて3つです。自分に合った方法で、退職金アップを考えてみるのがよいでしょう。

専門性を極める

退職金を増やしたい看護師は、専門看護師や認定看護師などを目指してみるといいでしょう。専門看護師や認定看護師は、看護師の専門性を極めた人が取得できる資格です。

プラスの資格を保有していると、とくに功績倍率ベースを採用している場合に退職金アップが狙えます。

管理職に就く

管理職に就くのも看護師の退職金を増やす方法です。看護主任・看護師長・看護部長といった役職に就くと、基本給や病院への貢献度が上がります。

勤務先が基本給ベース・功績倍率ベースを採用している場合は、退職金が上がるでしょう。

退職金の多い職場に転職する

退職金を増やしたいと思っても、今の勤務先に退職金制度がない、もともと支給額が少ないといったケースもあるでしょう。このような場合は、転職を視野に入れるのが賢明です。

より自身の希望に合った退職金制度を採用している病院に転職できれば、手間をかけずに退職金を増やせる可能性があります。

退職金で後悔しない看護師の転職先の選び方

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確実に退職金の支給がある職場に転職したい場合は、まずは求職票をしっかりと確認しましょう。退職金の支給がある場合、「勤続年数〇年以上で支給」等の記載があります。また、実際に働いている知り合い等に聞いてみるのも一つの方法です。より詳細な情報を得て、転職活動に役立てましょう。

転職先は、退職金の相場が高い傾向にある国立・公立病院がおすすめです。仕事への姿勢や頑張りを退職金に反映させたい場合は、功績倍率ベースを採用している施設もよいでしょう。

看護師の退職金に関するQ&A

ここでは、看護師の退職金についてよくある質問をまとめています。

Q.公務員看護師の退職金は?

A:公務員看護師は、ほかの医療機関に勤める看護師と比べて退職金の支給額が高めです。

国家公務員看護師の退職金は「国家公務員法」で、地方公務員看護師の退職金は「地方公務員法」によって定められています。

看護師が公務員になりたい場合、一般の事務職と同じ公務員試験を受ける必要はありません。国や自治体の求人に応募して採用されると、公務員になれます。

国家公務員

退職手当額=退職日の俸給月給×退職理由別・勤続年数別支給率

国家公務員の退職金は、退職した日の俸給月給に退職理由や勤続年数別の支給率をかけて計算します。俸給月給は、一般的な会社員の基本給に当たるものです。支給率は、自己都合による退職でもっとも少なくなります。

地方公務員

退職手当額=基本額+調整額

地方公務員の退職金は、基本額と調整額の合計によって計算されます。

基本額は、退職日の給料の月額に退職理由や勤続年数別の支給率をかけて算出。調整額は、看護師として在職中にどの程度貢献したかによって加算される金額です。調整月額の中で、額が多いものから60月分の額を合計した数字を指します。

Q.退職金に税金はかかりますか?

A:所得税・復興特別所得税などがかかります。

毎月の給料やボーナスに税金がかかるのと同じように、退職金にも税金がかかります。

ただし、退職金を一時金として受け取る場合は、「退職所得控除」という税金の優遇措置の適用対象に。控除額の計算方法は下記の通りです。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数―20年)

出典:国税庁「 退職金と税 退職所得控除額

看護師として退職金を増やしたいなら転職も視野に入れてみよう!

看護師がもらえる退職金は、勤務先の医療機関の規模や勤務年数などによって変わります。一般的に、国立病院や政令指定都市にある公立病院に勤める場合、勤続年数が長い場合などは退職金の支給額が高い傾向にあります。

退職金を増やしたい看護師は、まず、プラスの資格を取得したり管理職への昇進を目指したりしてみるといいでしょう。今の勤務先で退職金の増額が見込めない場合は、看護師として別の医療機関への転職も視野に入れてみてください。

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