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老健(介護老人保健施設)で働く看護師の仕事内容とは?勤務体制や年収もご紹介

記事掲載日:2020/08/26

老健(介護老人保健施設)で働く看護師の仕事内容とは?勤務体制や年収もご紹介

看護師が働くフィールドは、医療機関だけではありません。高齢化社会に伴って、最近では介護施設で働く看護師も増えてきました。老健(介護老人保健施設)勤務の看護師も、その一人です。

しかし、これまで医療機関での勤務経験しかない方は、老健で働く看護師の仕事内容や実情を知らないことのほうが多いでしょう。

今回は、老健で働く看護師の仕事内容や勤務体制、年収などをご紹介します。老健看護師に関する疑問を解決して、転職活動をスムーズに進められるようにしましょう。

老健(介護老人保健施設)とは

老健(介護老人保健施設)とは、入院していた要介護度1~5の高齢者が医療ケアやリハビリなどのサービスを通して、在宅復帰を目指すための施設です。介護保険法にもとづく入所施設のひとつで、通常3か月~6か月で退所することとなっています。ただし、特養の待機に利用する人も多く、平均滞在日数は311日と長い傾向にあります。入所者数は施設によって20人以下から100人以上までと幅広いです。なかでも100名を定員としている施設が多い傾向にあります。

老健で働くスタッフは、看護師のほかに、医師や介護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士などさまざまです。医療ケアも提供する施設とされているため、常勤医師がいること(多くの施設で施設長となっている)、そして看護師やリハビリ職の配置数が多いことも特徴です。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省『介護老人保健施設』
2019 年度(令和元年度) 介護老人保健施設の経営状況について

特養(特別養護老人ホーム)との違いは?

老健と混合されやすい施設が、「特養(特別養護老人ホーム)」です。特養も介護保険法にもとづく入所施設です。

老健との違いは、入所期間に定めがないことにあります。特養に一度入所すると、退所の意志を示さない限り、利用し続けられます。

また、要介護度は原則として3~5となっており、老健の要介護度1~5よりも高い基準です。自宅生活が難しい、介護度の高い人の生活施設が特養です。

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特別養護老人ホーム(特養)で働く看護師の仕事内容とは?働くメリット・注意点を解説

老健における看護師の配置基準

老健はサービスの提供にあたり、必要な人員の基準が定められています。

職種 配置基準
医師 常勤1人以上(入所者100人に対して1人以上)
薬剤師 実情に応じた適当数(入所者300人に対して1人を標準とする)
看護・介護職員 入所者3人に対して、看護職員または介護職員1人以上(そのうち看護職員の割合は2/7程度)
支援相談員 1人以上(入所者100人に対して1人以上)
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 入所者100人に対して1人以上
栄養士 入所者の定員が100人以上の場合、1人以上
介護支援専門員 1人以上(入所者100人対に対して1人を標準とする)
調理員、事務員その他の従業者 実情に応じた適当数

この配置基準によれば、入所者の定員が100人規模の老健であれば、看護師は9人前後配置される計算になります。

老健で働く看護師の仕事内容

老健で働く看護師の主な仕事内容を見ていきましょう。

投薬や点滴などの医療行為

医療ケアが提供される老健では、医師の指示を受けて、看護師が医療行為をします。投薬や点滴、採血、たんの吸引、褥瘡の処置などです。病状が急変した場合は、病院への搬送や付き添いなども行います。

健康管理全般

バイタルチェックや健康チェックなどの健康管理全般のほか、施設によっては食事介助や排泄介助なども行うことがあります。

看取りケア

看取りケアは死期の近づいた方が最後まで自分らしく生きられるよう、身体的・精神的苦痛を緩和・軽減する医療行為です。

入所期限が一定期間の老健であっても、入所者の看取りを実施するニーズは高まっています。公益社団法人 日本看護協会が発表している「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」によると、2014年度の1年間に施設内で最後まで看取った経験がある看護職員の割合は回答者の60%に上ります。

また、同調査によると、看取りの方針として「利用者・家族からの希望に応じて施設で看取る」が71%もあり、終身施設である特養の78%と大差ありません。超高齢社会を迎えた日本において、今後も老健での看取りケアが増える可能性が高いと言えるでしょう。

老健の看護師として働くメリット

医療機関と比べて、老健の看護師として働くメリットはどこになるのでしょうか。主なメリットを見ていきましょう。

病院勤務に比べて体力を使う業務が少ない

病院勤務に比べて、体力を使う業務が少ないのは大きなメリットでしょう。病院勤務の場合は、患者さまの介護業務も看護師が行うことが通常です。身体介助などで腰を悪くする看護師は多くなっています。しかし老健の場合、介護業務は基本的に介護職が行います。施設によっては利用者介助をする場面もありますが、看護師は本来の看護業務に専念できることがほとんどです。

老健は在宅復帰を目的としているため、特養と比較すると介護度の軽い人が多い傾向にあります。そのため、介護業務も負担が軽い場合が多くなります。

各領域の専門スタッフと連携できる

前述の通り、老健は特養やさまざまな業種のスタッフを配置する必要があります。医師だけでなく、薬剤師や理学療法士・作業療法士などのリハビリテーションスタッフと連携し、業務を行えます。

トラブルなどで長期的に悩まなくても良い

医療機関では通院・入院されている特定の患者さまとの関係性がうまくいかず、悩んでしまうケースもあります。しかし、老健は入所者の入れ替えが早いため、トラブルが起こったり、コミュニケーションがうまくいかなかったりする方がいた場合も、長期的に関わる必要がありません。

老健の看護師として働く注意点

続いては、老健の看護師として働く注意点をご紹介します。

医療技術のスキルアップが望めない

医療技術のスキルアップが望めないのは、老健のデメリットです。老健は病状が安定してリハビリを主に行う施設なので、医療機関と比べて医療処置をする機会は少なくなります。

さまざまな医療や最新の医療に触れるチャンスが少ないため、医療技術のスキルアップは難しいと言えるでしょう。

また、医療機関とは別のフィールドであるため、病院への転職が難しくなる可能性もあります。

困ったときに相談できる医療従事者が少ない

医療機関では医師や看護師が多く勤務しているため、何か困ったことがあっても、すぐに相談できる体制となっていることでしょう。

しかし老健は異なります。医療機関と比べて医師や看護師の数は少なく、シフトによっては医療職が一人という場合も想定されます。医療に関する判断と対応を求められるため、責任の大きさを感じる看護師もいます。

老健で働く看護師の勤務形態や年収は?

老健で働く看護師の勤務形態や年収は、転職を考える上で大切なことです。実情はどうなのでしょうか。

老健で働く看護師の勤務形態

年間休日数は、勤務先によって異なります。ナースステップの求人を調査したところ、4週8~9日休みのシフト制となることが多い傾向にあります

老健では夜勤を行わなければいけない施設もあります。とくに正社員として勤務する場合は、月に数回の夜勤業務が入ってくることでしょう。

前述の報告書によると、「日勤および、夜勤またはオンコール業務にも従事」している看護師が74%と、特養とほとんど変わりません。ただし、老健勤務の看護師の回答者のなかで「オンコール」がないと答えた割合は約80%と、勤務のない日はゆっくりと休める施設が多い傾向にあると言えるでしょう。

老健で働く看護師の年収

ナースステップが東京都の老健看護師求人(2022年3月時点)を調査したところ、正社員で月給25~40万円ほど、年収換算で350~600万円がボリュームゾーンとなっています。夜勤がある場合は手当がつきます。

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まとめ

老健の看護師業務は、医療ケアがあるものの、医療機関と比べると多くありません。治療ではなく、生活やリハビリを支える視点が看護師にも求められます。

体力を必要とする業務が少ないことは大きなメリットです。今回の記事を参考にして、条件にぴったり合った老健を見つけましょう。

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