【2023年】看護師の離職率は高いって本当?無理なく働ける病院の特徴
記事掲載日:2023/06/07
看護師は離職率が高い職種と思っていませんか。人手不足や忙しいなどのイメージから離職者が多い印象を抱きがちですが、実際はどうなのでしょうか。今回は、看護師の離職率を全職種や病院の規模、都道府県別に比較してご紹介。看護師の離職理由や離職率が低い病院の特徴なども解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 看護師の離職率
- 看護師の離職率と全体の比較
- 病院の規模別看護師の離職率
- 病院の種類別看護職員の離職率
- 都道府県別看護職員の離職率
- 看護職員が離職する原因
- 看護師の離職率が低い病院の特徴
- 看護師の離職率にまつわるよくあるQ&A
- 看護師として転職するなら離職率が低い病院を選ぼう!
看護師の離職率
准看護師は11.9%
(引用:日本看護協会『 「2021年 病院看護・外来看護実態調査」 結果 』)
日本看護協会は、2020 年度の正規雇用看護職員の離職率について、正看護師は10.4%、准看護師は11.9%だったと公表しています。※
新卒採用者・既卒採用者別で離職率を見てみると、正看護師の離職率は新卒採用で8.1%、既卒採用で14.6%という結果に。准看護師の離職率は、新卒採用で18.6%、既卒採用では28.0%でした。
全体的に見ると、新卒・既卒の採用方法に関わらず、准看護師の方が看護師よりも離職率が高いことがわかります。
※2023年3月時点の情報です。
看護師の離職率と全体の比較
看護師の離職率は、全職種の離職率より低いです。2020年度離職率は、正規雇用看護師で10.4%ですが、すべての職業の離職率は14.2%でした。
離職率が高いといわれる看護師ですが、全職種と比較して見ると実は離職率が低いことがわかります。
参考:日本看護協会『 「2021年 病院看護・外来看護実態調査」 結果 』
厚生労働省 「令和2年雇用動向調査結果の概要」
看護師の離職率が高いイメージなのはなぜ?
実は離職率が比較的低い看護師。それにもかかわらず、逆に離職率が高いと思われている理由は、定かではありません。しかし、慢性的に日本では看護師不足であることや、仕事内容や職場環境のしんどさから、離職率が高いという印象になっていると予想できます。
日本では、団塊世代が後期高齢者となる2025年に向けて、看護師の増員が求められ続けています。
しかし、看護師の需要拡大に反して入職者は増えておらず、依然として看護師1人当たりの業務量が多い状態です。また、感染症拡大の影響によって、離職率が上昇した当時のイメージが残っていることも要因のひとつでしょう。
しかし実際は、看護師の離職率は全職種の離職率よりも低いです。看護師の離職率について、世間のイメージと現状にはギャップがあることがわかります。
病院の規模別看護師の離職率
看護師や准看護師の離職率は、病院の規模によって異なります。2020年度の病院規模別の離職率を、正看護師と准看護師それぞれで見ていきましょう。
正看護師の場合
病院の規模 | 正規雇用 | 新卒 | 既卒 |
~99床 | 11.6% | 10.0% | 16.4% |
100~199床 | 11.6% | 10.2% | 17.4% |
200~299床 | 11.2% | 8.1% | 13.4% |
300~399床 | 10.5% | 8.9% | 16.1% |
400~499床 | 10.0% | 8.1% | 12.4% |
500床~ | 9.8% | 7.4% | 12.1% |
一部引用:日本看護協会『 「2021年 病院看護・外来看護実態調査」 結果 』
正看護師の離職率は、病床が少ない病院ほど高い傾向に。既卒看護師に関しては、病院の規模に関わらず離職率が10%以上という調査結果でした。
准看護師の場合
病院の規模 | 正規雇用 | 新卒 | 既卒 |
~99床 | 12.0% | 17.3% | 35.1% |
100~199床 | 12.0% | 24.1% | 25.6% |
200~299床 | 11.7% | 13.1% | 38.5% |
300~399床 | 12.5% | 12.9% | 20.0% |
400~499床 | 11.0% | 20.7% | 15.4% |
500床~ | 12.3% | 9.1% | 33.3% |
一部引用:日本看護協会『 「2021年 病院看護・外来看護実態調査」 結果 』
准看護師の離職率も、比較的病床数が少ない病院ほど高い傾向があります。しかし、正看護師ほど病院の規模に離職率が大きく左右されているとはいえないでしょう。
また、准看護師の離職率は正看護師と比べて、正規雇用・新卒・既卒すべてで高いという結果でした。
病院の種類別看護職員の離職率
病院の種類 | 正規雇用 | 新卒 | 既卒 |
国立※1 | 9.6% | 7.2% | 12.7% |
公立※2 | 7.5% | 7.5% | 7.7% |
厚生連※3 | 9.3% | 6.9% | 12.8% |
その他公的医療機関 | 13.0% | 4.5% | 0.0% |
社保関係団体※4 | 10.0% | 6.7% | 15.5% |
公益社団・財団法人 | 12.0% | 10.5% | 16.1% |
私立学校法人 | 12.1% | 8.2% | 15.0% |
医療法人※5 | 13.6% | 9.4% | 19.0% |
社会福祉法人 | 12.0% | 8.2% | 13.3% |
医療生協 | 10.4% | 4.9% | 10.9% |
会社 | 8.3% | 7.5% | 7.1% |
その他法人※6 | 11.1% | 11.6% | 13.2% |
個人 | 11.5% | 0.0% | 16.7% |
一部引用:日本看護協会『 「2021年 病院看護・外来看護実態調査」 結果 』
※1労働者健康安全機構、地域医療機能推進機構を含む
※2一部事務組合、地方独立行政法人、公立大学法人を含む
※3厚生連=厚生農業協同組合連合会
※4社保関係団体=社会保険関係団体(健康保険組合およびその連合会、共済組合およびその連合会、国民健康保険組合)
※5社会医療法人を含む
※6一般社団法人、一般財団法人、宗教法人等
※看護職員とは、看護師・保健師・助産師・准看護師
正規雇用の看護師の離職率がもっとも高いのは「医療法人」です。
新規採用者だけで見ると、「その他法人」や「公益社団・財団法人」の離職率が高い結果に。既卒看護師では、「医療法人」の離職率が高く、もっとも低い「公立病院」と比べると10%以上の差があります。
一方で、「公立病院」や「会社」に勤務する看護職員の離職率は、全体的に低い傾向が見られました。
都道府県別看護職員の離職率
都道府県 | 正規雇用 | 新卒 | 既卒 |
北海道 | 10.5% | 5.3% | 14.7% |
青森県 | 6.9% | 6.7% | 18.7% |
岩手県 | 6.1% | 9.0% | 24.6% |
宮城県 | 8.6% | 7.1% | 12.9% |
秋田県 | 7.4% | 5.7% | 9.6% |
山形県 | 6.1% | 4.7% | 9.9% |
福島県 | 7.3% | 9.8% | 14.3% |
茨城県 | 10.7% | 7.8% | 21.4% |
栃木県 | 10.1% | 15.0% | 13.2% |
群馬県 | 8.3% | 9.0% | 3.8% |
埼玉県 | 13.0% | 8.7% | 20.7% |
千葉県 | 11.9% | 6.4% | 11.9% |
東京都 | 13.4% | 10.6% | 17.4% |
神奈川県 | 14.0% | 8.6% | 20.0% |
新潟県 | 8.0% | 8.9% | 10.8% |
富山県 | 8.6% | 2.9% | 13.6% |
石川県 | 10.8% | 5.6% | 28.9% |
福井県 | 7.3% | 5.2% | 8.6% |
山梨県 | 8.7% | 5.8% | 10.9% |
長野県 | 8.2% | 5.1% | 9.2% |
岐阜県 | 10.8% | 9.3% | 15.0% |
静岡県 | 8.5% | 6.1% | 8.5% |
愛知県 | 12.2% | 6.9% | 13.1% |
三重県 | 9.8% | 4.9% | 18.0% |
滋賀県 | 10.2% | 9.9% | 17.4% |
京都府 | 11.7% | 7.2% | 13.1% |
大阪府 | 12.3% | 9.2% | 16.8% |
兵庫県 | 11.7% | 10.7% | 10.0% |
奈良県 | 10.8% | 8.1% | 19.5% |
和歌山県 | 9.7% | 8.7% | 15.2% |
鳥取県 | 7.4% | 4.7% | 7.3% |
島根県 | 6.5% | 4.7% | 6.7% |
岡山県 | 10.2% | 7.9% | 23.4% |
広島県 | 8.3% | 7.4% | 13.8% |
山口県 | 9.6% | 10.4% | 15.0% |
徳島県 | 7.1% | 7.5% | 3.6% |
香川県 | 8.5% | 14.5% | 4.5% |
愛媛県 | 8.8% | 4.7% | 14.3% |
高知県 | 7.8% | 5.3% | 13.6% |
福岡県 | 10.2% | 8.6% | 12.7% |
佐賀県 | 7.2% | 6.3% | 13.6% |
長崎県 | 8.3% | 6.3% | 9.1% |
熊本県 | 9.2% | 9.2% | 11.1% |
大分県 | 9.3% | 5.7% | 22.4% |
宮崎県 | 8.1% | 9.0% | 13.0% |
鹿児島県 | 9.4% | 4.7% | 21.1% |
沖縄県 | 10.9% | 7.5% | 4.9% |
一部引用:日本看護協会『 「2021年 病院看護・外来看護実態調査」 結果 』
※看護職員とは、看護師・保健師・助産師・准看護師
正規雇用の看護師の離職率は、地方よりも大都市部で高い傾向が見られます。離職率がもっとも高いのは神奈川県で、東京都、埼玉県の順に続いています。
新卒看護師や既卒看護師に関しては、地方と都市部に関わらずばらつきが見られました。
看護職員が離職する原因
看護師が離職する原因は、仕事上のストレスや私生活の影響などが多いようです。ここでは、看護職員の離職原因について詳しく見ていきます。
【看護職員が離職する原因】
ライフスタイルの変化
出産・育児・介護などを理由に離職する看護師は多くいます。厚生労働省の「看護職員就業状況等実態調査結果」によると、看護師の離職理由としてとくに多かったのは、出産・育児(22.1%)、結婚(17.7%)でした。ライフスタイルの変化をきっかけに離職する看護師が多いことがわかります。
入院設備のある病院では、24時間体制での対応が必要です。看護師はフルタイムでの出勤や交替勤務、夜勤を求められます。看護師の働き方は、ライフスタイルの変化に柔軟に対応しにくいのが現状。結果として、離職を選択する看護師も多くなっています。
給与への不満
看護職は、人の命に関わり大きな責任を伴う仕事です。しかし職場によっては、夜勤などの手当を除くと一般の仕事と同じくらいの給料であるというところも。
また、病院という職場の特性上、すぐに労働時間を減らしたり労働環境を変えたりするのが難しい現状もあります。給料への不満から離職する看護師もいるといえるでしょう。
働き方への不満
看護師は、柔軟な働き方を求められることが多い職業です。緊急入院や急変対応などによって残業が増えたり、一緒に働くスタッフの体調不良などがあると勤務変更によって急に夜勤が増えたりする場合もあります。
また、休日の勉強会や呼び出しの待機で思うように休めない、といったケースも。一般的な会社員と比べて勤務状態が安定しないこともあるため、働き方への不満から離職を決断する看護師もいます。
人間関係の悩み
看護師は、患者さまやそのご家族のほか、医療チームの一員として医師や検査技術師など、非常にたくさんの人と接する機会があります。
人間関係の悩みはどの職業でも起こりうる問題です。しかし、看護師はとくに毎日さまざまな人と関わるため、コミュニケーションがうまく取れず、苦手な人が出てくる場合も。結果的に離職につながってしまうケースがあります。
責任の重さへのストレスや不安
責任の重さやストレス、不安といった精神面の負担の大きさが、離職の原因となる場合もあるでしょう。
看護師は命に関わる仕事です。日常的な忙しさに加えて、緊迫した場面では最善の選択を求められます。患者さまにもっとも近くで関わる職種のため、責任も重くなりがちです。
キャリアアップ
看護師としてのキャリアアップを図るために離職を選ぶ方もいます。看護師がキャリアアップするには、年数を重ねてスキルアップするほかに、専門分野の知識を身につける、管理職になるなどの方法があります。
中でも、専門分野の知識を深めるための「認定看護師」や「専門看護師」の取得には、膨大な勉強時間が必要です。看護師の仕事は日々忙しいため、働きながらスキルアップを目指すのは難しいのが現状。勉強時間を確保するために今の病院を離れる看護師もいます。
看護師の離職率が低い病院の特徴
看護師の離職率が低い病院は、規模の大きさや病院の所在地などに特徴があります。離職率が低い理由を見てみましょう。
規模が大きい
看護師の離職率は、病床数が多い病院ほど低い傾向にあります。先ほどのデータにもあるように、正規雇用看護師の離職率は99床以下の病院で11.6%なのに対し、500床以上の病院では9.8%です。
規模が大きい病院ほど、看護師の人数も多く業務の分担ができます。業務のマニュアル化や電子化などが進んでいることも多いです。看護師にとってより働きやすい工夫がされているので、大規模な国公立病院などは離職率が低いと考えられます。
地方にある
地方にある病院も看護師の離職率が低めです。
看護師の仕事は、ライフスタイルの変化に対応しにくい傾向が見られます。しかし、自分の実家に近い地方の病院に勤めることで、両親や親族の協力を得ることが可能。結婚や出産など私生活に変化があっても、長く働ける可能性が高まります。
なお、都市部の病院の離職率が高い理由には、求人の多さやキャリアアップを目指す意欲のある人の多さが関連していると推察できるでしょう。
看護師の離職率にまつわるよくあるQ&A
今の職場を辞めたいと考えている看護師の方は、退職や転職についてたくさんの疑問があるでしょう。ここでは、看護師の離職率についてよくある質問をまとめています。
Q.看護師になって1年目ですが、辞めてもいいでしょうか?
退職を決断する前に、看護師を辞めたいと思う原因が「経験不足」なのか「職場環境」なのかを考えてみてください。
看護師1年目や2年目といった新人のうちは、辞めたいと思うことも多いでしょう。しかし、経験が少ないうちはできないことが多くて当たり前。思いつめすぎないことが大切です。
もし、経験が浅い1年目や2年目で看護師を辞める場合は、転職理由や転職先の探し方などをプロに話を聞くのが有効です。
Q.看護師のキャリアにとって転職はマイナスですか?
看護師として転職経験が数回あることは珍しくありません。キャリアアップや私生活と両立するためなど、職場を変えて看護師を続ける人もたくさんいます。
看護師は国家資格であり、常に人手不足の職種であるといった理由から、転職を繰り返しても比較的就職しやすいでしょう。
Q.看護師が今の職場をやめた方がいいサインは?
・メンタルや体の健康状態が悪い
・明らかに職場環境が悪い
・プライベートに悪影響がある
・新たなことに興味がある
一時的な感情で職場を変えることはおすすめできません。しかし、自身の健康や私生活に悪影響がある場合、無理は禁物。職場環境に明らかな問題がある場合も同様です。
また、新たな診療科や病院に興味がわいたといったポジティブな気持ちがあるときは、転職を考えてもいいタイミングでしょう。
Q.看護師が転職をするときにやるべきことは?
・辞める理由をはっきりさせる
・看護師の仕事を続けるかどうか決める
・キャリアプランを明確にする
・求人サイトで探す
・転職コンサルタントに相談する
まずは、今の職場を辞める理由や今後のキャリアプランを考え、自分の気持ちの整理からはじめましょう。転職活動は大きなエネルギーを使います。ときにはプロに助けてもらいながら、自分に合った転職先を探すことが大切です。
看護師として転職するなら離職率が低い病院を選ぼう!
看護師は一般的に離職率が高い印象を抱きがちですが、実際はすべての職業の離職率よりも低いことがわかりました。とくに、規模の大きい病院や地方にある病院は、看護師の離職率が低めです。
しかし病院によっては、業務量や待遇面への不満などを理由に離職してしまう看護師も存在します。病院という特性上、すぐに業務内容や待遇面の改善を期待するのは難しいかもしれません。
看護師として職場環境を変えたい方、キャリアアップをしたい方は、転職して無理なく長く働ける新しい職場を探してみるのがよいでしょう。
ナースステップは、看護師業界を熟知したプロが看護師の転職を徹底的にサポート。ミスマッチが圧倒的に少ないことが魅力です。プロに助けてもらいながら、自分に合ったベストな転職先を見つけてください。