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フィジカルアセスメントとは?取り組む手順や目的、ポイントを詳しく解説

記事掲載日:2022/02/01

フィジカルアセスメントとは?取り組む手順や目的、ポイントを詳しく解説

患者さまに寄り添い医療ケアを施す看護師にとって、患者さまの現状を分析・判断するアセスメントは非常に重要です。

中でも身体状態を中心に診るフィジカルアセスメントは、看護師として患者さまのケアを行う上で欠かせないプロセスとなります。

今回はケア方法の選択に大きく関わるフィジカルアセスメントについて、概要や目的、手順、ポイントなどを解説していきます。また、現在ニーズが高まっている訪問看護時のフィジカルアセスメントについても確認していきましょう。

フィジカルアセスメントとは

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フィジカルは「身体的」、アセスメント(assessment)は「客観的分析・評価」と言う意味を持つ言葉です。

つまり、フィジカルアセスメントとは、「患者さまの身体状態を客観的に分析・評価して把握すること」を指しています。

患者さまの状態や話から得られる主観的情報、診察や検査から得られる客観的情報を総合的に評価し、患者さまに適した対応を決定します。

看護師がフィジカルアセスメントを行う目的

フィジカルアセスメントは医師にも看護師にも必要なプロセスですが、目的が異なります。

医師のフィジカルアセスメントは診察結果の決定を目的として行うのに対し、看護師のフィジカルアセスメントは患者さまに最適なケアの判断や、以前行った処置の評価が目的です。場合によっては医師と看護師それぞれの立場から得た情報の共有を行い、治療方針の決定に役立てる場合もあります。

看護師のフィジカルアセスメントは患者さまの治療の方向性に直接的に関わる非常に大切なプロセスと言えるでしょう。

フィジカルアセスメントの手順

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フィジカルアセスメントは基本的には以下の手順で行います。

①問診

問診では、患者さまと会話をして生活や体調を確認していきます。自覚症状や既往歴、家族の病歴、生活習慣など身体状態に関する情報を集めましょう。

②視診

患者さまの身体全体を観察し、異常がないかチェックします。

視診する部位のスピーディな判断と大きさや形状、色、動きなどの観察が必要です。患者さまと会話をしながら行い、身体状態や機能だけでなく表情や話し方にも注目するとよいでしょう。

③触診

触診では、実際に患者さまの身体に触れながら皮膚の状態の確認、正確な患部の把握を行います。痛みや震えについても確認しましょう。

患部の状態によって触り方や使う指を変えるとよいでしょう。

④打診

患者さまの身体の表面を叩くことで、異常部位の位置・大きさ、密度やガス溜まりの有無など内部の状態をチェックします。

打診時の音や硬さなどにも注意が必要です。

⑤聴診

聴診は、聴診器を使った身体内部の音の確認です。患者さまの呼吸音、心音、血管音や腸蠕動音などをチェックして診察をしていきます。

なお、患者さまにかかる負担が少ない診察方法からの実施が原則となるため、診察箇所によっては順番が異なります。

腹部へのフィジカルアセスメントの順序は問診→視診→聴診→打診→触診です。聴診や打診での腸蠕動への影響や触診による痛みを考慮し、この順番となっています。

フィジカルアセスメントのポイント

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正しいケアにつながるフィジカルアセスメントを行うためにはいくつかポイントがあります。患者さまの状態に適したケアを選択できるよう、以下のポイントを押さえたフィジカルアセスメントを行いましょう。

効率的な情報収集を心がける

触診や打診などは患者さまの身体に負担をかける可能性もあります。手早く情報収集ができるよう、集めた情報は適宜整理しましょう。患者さまから得た情報だけでは不足がある場合は、患者さまのご家族など近しい人からの情報収集も行うなどの工夫もするとよいでしょう。

仮説にとらわれすぎない

直感や経験則から仮説を立てることも重要ですが、仮説を重視しすぎると偏った情報収集となる可能性があります。

仮説段階では判断につなげず、総合的な情報収集を行った上で判断していきましょう。また、他の看護師からの意見を取り入れ、多角的な視点から確認すると新たな問題を発見できるかもしれません。

患者さまとの信頼関係を築く

フィジカルアセスメントの際も、患者さまとの関係性は重要です。

特に問診の段階で上手く情報を引き出せると、患者さまの細かい変化の兆候を発見できる可能性が高まります。また、触診や打診の際もリラックスした状態の患者さまを診察できるため、正確な全身状態を把握しやすいです。

日々の業務や患者さまとのコミュニケーション時から信頼関係の構築を意識すると正しいケアにつながるフィジカルアセスメントができるでしょう。

訪問看護におけるフィジカルアセスメント

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現在、急速な高齢化による要介護者の増大や在宅療養に対する意識の変化などの要因から「訪問看護」のニーズが高まっています。


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フィジカルアセスメントは医療機関だけでなく、訪問看護時も非常に重要なプロセスです。訪問看護でのフィジカルアセスメントで意識したいポイントを以下で詳しく確認していきましょう。

患者さまに寄り添った判断をする

患者さまの自宅に伺い、ケアを行う訪問看護では患者さまの生活や希望に沿った判断をするようにしましょう。

医療機関ではフィジカルアセスメントのみに集中することも多いかもしれませんが、訪問看護時は患者さまの生活の妨げにならないフィジカルアセスメントを意識します。自然な会話の中で問診を行いながら他の手順を進めるとよいでしょう。

また得られた情報から医療ケアの方法を決定する際も、患者さまの希望を優先します。治療や病状の回復に努めるケアだけでなく、患者さまが快適に過ごせるケアを提案しましょう。

セルフケア能力も重要

医療機関では、治療や身体機能の回復が中心となり、患者さまも医師や看護師の判断に従って生活します。

一方、訪問看護の場合は患者さまの生活が中心です。生活の中で患者さま自身やご家族ができることも考慮して、フィジカルアセスメントからの判断を行いましょう。

日々の健康管理の記録などを任せることでセルフケア管理能力の向上が見込めるだけでなく、機能回復にも良い影響を与えるでしょう。

周囲との連携も意識する

訪問看護の場合、看護師が持つ情報でできることは限られています。訪問がない日の情報については患者さまのご家族や訪問介護士、医師などから集め、チームとして在宅ケアの改善を図ることが必要です。

医師や介護士との連携・情報共有を行い、フィジカルアセスメントの際も参考にするとよいでしょう。

まとめ

今回は、看護の中でも重要な過程の一つであるフィジカルアセスメントについて解説しました。患者さま一人ひとりに適した看護ケアを行うためには、アセスメントが非常に大切になります。

特に身体状態に注視して行うフィジカルアセスメントは治療にも大きく関わるものです。フィジカルアセスメントを上手くできる看護師は現場でも重宝されます。日々の勉強や先輩看護師の様子や観察などから知見を得て、スキルアップしていくと良いでしょう。

また、医療機関でのフィジカルアセスメント、訪問看護の際のフィジカルアセスメント両方に対応する経験を積むと多角的な判断力が身につきます。興味がある方は積極的に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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