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【2024年】医療・介護・障害のトリプル改定を解説!看護師に求められること・環境の変化について

記事掲載日:2024/05/22

【2024年】医療・介護・障害のトリプル改定を解説!看護師に求められること・環境の変化について

2024年に施行される「トリプル改定」。看護師などを取り巻く環境に変化を与えると予想され、詳しい改定内容が注目されています。今回は、トリプル改定で重要視される4つのポイントや看護師への影響を解説。また、転職を検討中の方にメリットが予想される職場も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

トリプル改定とは?

トリプル改定とは、「診療報酬」「介護報酬」「障害福祉サービス等報酬」の 3つの報酬が同じタイミングで改定されること

トリプル改定とは、「医療」「介護」「障害福祉」の3つの報酬改定が同じ年に重なることの通称です。通常、診療報酬は2年ごとに1度、介護と障害福祉の報酬は3年ごとに1度のペースで改定されます。

トリプル改定は6年に1度あり、2024年が該当。3つの分野での改定が重なるため、大規模で重要な改定となることがあり、動向が注目されています。

【参考】トリプル改定で変わる3つの報酬内容

診療報酬 診療行為やサービスを提供した病院やクリニックなどの保険医療機関に、その対価として支払われる報酬
報酬改定率:+0.88%
介護報酬 介護サービスを提供した事業者に、その対価として支払われる報酬
報酬改定率:+1.59%
障害福祉サービス等報酬 障害福祉サービスを提供した障害福祉サービス事業所などに、その対価として支払われる報酬
報酬改定率:+1.12%

2024年のトリプル改定が重要視される理由

  • 2025年問題
  • 2040年問題
  • 2024年のトリプル改定では、上記2つが課題といわれています。

    2025年問題とは、「団塊の世代」の多くが75歳以上を迎える2025年を境に、高齢化が進んで介護や医療の需要が急速に上がることに対し、サービスを提供できる体制を整えようとする動きです。

    また、2040年頃にかけては「団塊ジュニア世代」が65歳以上を迎える時期になり、75歳以上の人の数がピークを迎えることが予測。生産年齢人口が急速に減少することから、2040年問題にも対処が必要であると考えられます。

    2024年は、これらの問題を迎える前年にあたるため、課題への対処や動向が注目されています。

    2024年のトリプル改定の施行スケジュール

    診療報酬改定は、通常4月1日に施行されますが、2024年は6月1日施行に後ろ倒しされました。電子カルテやレセコンベンダのシステム変更作業など、医療機関の負担を減らすためです。

    診療報酬の改定時期変更を受け、介護報酬、障害福祉サービス等報酬が改定される時期も、一部の内容を除いて同じく2024年6月1日に施行されます。

    2024年トリプル改定で重要視される4つのポイント

    2024年トリプル改定で重要視される4つのポイント

    前述したトリプル改定によって、看護師が働く現場では大きな変化が予想されています。具体的にどのような変化が予想されるか、以下で詳しく紹介します。

    「医療」「介護」「障害福祉サービス」の連携強化

    トリプル改定では、とくに医療・介護・障害福祉サービスの3つの連携体制を強化することが重要視されています。2025年問題、2040年問題に対処するには、国が進めている地域包括ケアシステムの実現が必要です。

    3つの機関が連携を取り、地域の中で医療〜介護・障害福祉サービスが完結するように整備する必要があります。医療と介護・障害福祉サービスがこれまで以上に連携を強めることで、切れ目なく複合的なニーズに対応したケアを地域で受けられることを目指しています。

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    地域包括ケアシステムで看護師に求められる役割とは

    DX化の推進

    トリプル改定後はさらなるDX化を図るため、医療機関や介護福祉施設などへのデジタルツールの導入が進むでしょう。患者さまにより質の高い看護ケアや医療を提供するためには、ケアに割く時間をもっと確保する必要があると考えられているためです。

    DX化の推進によって業務の効率化を図り、看護ケアや医療ケアにあたる時間を確保することで、サービスの質向上につながります。

    人材確保・処遇改善のための取り組み

    トリプル改定によって、人材確保と職員の処遇改善に向けたさまざまな取り組みも行われます。

    将来的な労働力人口の不足を見据え、3つの報酬すべてで「ベースアップ評価料」が設けられました。「ベースアップ評価料」の新設によって、医療・介護・障害福祉の現場で働く対象職員の賃金を、2024年度に+2.5%、2027年度に+2.0%にすることを目指しています

    訪問看護ステーションなども含め、看護師、准看護師、保健師、助産師の処遇改善によって人材確保を図る動きが加速するでしょう。

    外来医療機能の強化

    人口減少と高齢化が進む中、大病院に受診者が集中しすぎることが懸念されています。トリプル改定後は、外来医療の機能を適切に運用するための取り組みが実施されるでしょう。

    かかりつけ医の役割を担うクリニックや診療所と大きな病院との連携体制を整え、まずはかかりつけ医を受診し必要時に病院を紹介する流れを強化します。また、状態が安定したらかかりつけ医に逆紹介する流れも周知していきます。

    トリプル改定の他にも看護師を取り巻く環境の変化

    2024年にはトリプル改定だけでなく、上記2つの制度の施行も予定されています。2つの制度は看護師にどのような影響や変化をもたらすのか、確認しておきましょう。

    第8次医療計画

    医療計画とは、医療法にもとづいて6年に1度のペースで策定されるものです。地域の特性に合わせて適切な医療を提供できる体制を整えるために、さまざまな施策が策定されます。

    2024年の第8次医療計画では、2025年を見据えた地域医療構想や外来報告機能の確立、在宅医療や介護と医療の連携に関する内容などが盛り込まれる見込みです。看護職にとって、より多職種との連携が求められるようになるでしょう。

    医師の働き方改革

    医師の働き方改革は、2024年4月より施行されます。医師の長時間労働問題を改善する目的があり、勤怠管理ツールの導入が進められる予定です。医師の業務負担を軽減するために、法改正を行って各職種でタスクシフト/シェアを進める動きも進められます。

    今後は、医師・看護師・事務職などで連携を図り、業務を分担して行う必要があるでしょう。看護師も一部、医師の業務を代行する可能性があります。

    トリプル改定や各制度の施行により看護師に求められること

    トリプル改定や各制度の施行により看護師に求められること

    トリプル改定や各制度が施行されると、看護師にはより多くの役割が求められることが予想されています。具体的にどのような役割が求められるのか、以下で解説します。

    今まで以上に深い多職種連携の体制が求められる

    地域包括ケアシステム実現に向けて、医療・介護・障害福祉サービスそれぞれの連携強化が進められることで、今までよりもさらに多職種連携が求められます

    最初は、コミュニケーションや情報共有の仕方に戸惑う可能性もあるでしょう。しかし、根本にある達成すべき目的は、患者さまが住み慣れた地域で安心して過ごすことや、よりよい看護ケアを提供することです。各職種が連携の取り方を工夫したり、円滑な情報共有に努めたりすることが求められています。

    DXを活用した業務に慣れる必要がある

    トリプル改定が行われることでDX化が推進され、デジタルツールの導入が加速する見込みです。デジタルツールの導入により、今まで手作業でしていた業務を効率よく進められることが期待されます。

    ただし、デジタルツールが導入されたばかりの段階では、使い方や運用に慣れる必要があり、戸惑うこともあるでしょう。日々の業務の合間に時間を作り、デジタルツールをうまく活用できるように工夫することが求められます。

    医師の働き方改革によるタスクシフトが求められる

    医師の働き方改革によって、今まで医師が担当していた業務を看護師や事務職など他の立場の人が担うケースも増えることが予想されます。薬剤師や事務職だけでなく、看護師の業務も増える可能性が高いため、時間外労働にならないよう、職場内での連携や共有体制の強化が必要です。

    看護師も時間外労働や人材不足が問題になっている職種。看護師の仕事も、必要に応じて事務職や看護助手などの他職種へシフトすることが大切でしょう。

    【医師から看護師へタスクシフトの例】

  • 特定行為研修を修了した看護師による特定行為(21区分38行為)
  • 事前に決めたプロトコールにもとづいた薬剤の投与・採血・検査の実施
  • 救急外来において、医師の事前の指示や事前に決めたプロトコールにもとづく採血・検査の実施
  • 参考:厚生労働省「タスク・シフト/シェア推進に関する検討会 議論の整理の公表について 別添1 参考資料

    訪問看護師・介護施設看護師に転職する3つのメリット

    トリプル改定や各種制度の施行が進む中、今転職するとメリットが見込まれる注目の転職先があります。とくに、訪問看護や介護施設の現場では、以下に紹介するような理由からメリットがあるといえるでしょう。

    人材獲得競争が高まり、待遇向上が見込まれる

    地域包括ケアシステム構築の動きが加速することで、訪問看護師や介護施設看護師の需要が高まると考えられます。過去に就業経験がある人材など、スキルの高い人材を獲得したい動きが加速するでしょう。

    また、訪問看護の事業所や各介護施設では、より能力の高い人材を確保するために待遇を向上させるケースも。今後、これまでに比べて訪問看護や介護施設の分野は、よりよい待遇の求人が増える可能性があるといえるでしょう。

    DX化推進によって業務効率化が進み、働きやすくなる

    トリプル改定によって、今後は訪問看護師や介護施設看護師が働く職場で、ICTなどシステムの導入が進む見込みです。DX化の推進により、今まで手作業で行っていた事務作業などにかかる時間を短縮できれば、本来の目的である患者さまの看護にたっぷり時間を作れるでしょう。

    患者さまに寄り添い、個性を重視した看護ケアに取り組みやすくなることで、訪問看護事業所や介護施設は今までよりも働きやすい環境になる可能性があります。

    就業経験が重宝され、将来的なキャリアアップにつながる

    訪問看護師や介護施設看護師の需要が高まると、各事業所や施設はより優れた人材を獲得したいと考えるようになります。採用において、過去の就業経験が重視される可能性も高いでしょう。

    訪問看護師や介護施設看護師の経験がある方にとっては、経験を強みにでき、これらの事業所・施設に転職しやすくなります。未経験の人と比べて、経験がある人の方が将来性も見込まれやすいです。管理職や役職などへのキャリアアップを目指しやすくなるでしょう。

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    トリプル改定によって、看護師の役割はより重要に

    2024年のトリプル改定では、主に2025年問題と2040年問題への対策から大きな改定が行われます。さらに、第8次医療計画と医師の働き方改革の施行もあり、看護師を取り巻く環境は大きく変わるでしょう。今後看護師には、多職種との連携やDX化への対応、医師からのタスクシフトなど、今まで以上に幅広い役割が求められます。トリプル改定や各種制度の施行による影響を知り、看護師の仕事を円滑に進められるようにしましょう。

    また、トリプル改定による変化は、よりよい条件の職場に転職するよい機会でもあります。

    ナースステップには医療業界専任のコンサルタントが在籍しており、看護師の方の転職を無料でサポート。一人ひとりのお悩みに寄り添ったアドバイスをいたします。やりがいを感じながら訪問看護師や介護施設看護師として働きたいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。