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看護師不足は現場にどう影響する?アフターコロナも見据えた現状を解説

記事掲載日:2022/02/03

看護師不足は現場にどう影響する?アフターコロナも見据えた現状を解説

日本における医療提供体制は、従来から抱える少子高齢化問題や直近の新型コロナウイルス感染症への緊急な対応などを幅広くカバーしなければなりません。

そのなかで、療養上の世話や診療の補助など、患者さまの生命と生活を支える看護師の役割も非常に重要です。

しかし、近年"看護師不足"が医療における問題として取り上げられるようになりました。

そこで、看護師が不足している実態やそれを引き起こす原因、"2025年"と"アフターコロナ"を含めた将来展望、そして看護師不足による現場の看護師の働き方や給与への影響について解説します。

データからみる看護師不足

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日本における看護師不足は、厚生労働省による調査や結果の公表によって明確になっており、同時に課題視されている問題でもあります。

まずは看護師不足の根拠となるデータをみていきましょう。

「就業保健師等の年次推移」では、看護師の人員数自体は増加しており、労働力が減少しているわけではないと示されています。

しかし、看護師の「有効求人倍率(求人数÷求職者数)」はここ数年で2倍(2020年時点で2.31倍)を上回っており、平均(2020年時点で1.39倍)よりも高い倍率といえます。

都道府県ごとの人口あたりの看護師数や、病院やクリニックなど職場ごとの有効求人倍率にばらつきはありますが、雇用の募集枠に対して人材が不足しているのは事実です。

さらに、OECD(経済協力開発機構)加盟国の病床100床当たり看護職員数(2017年時点)をみると、OECD単純平均で183.4人に対して、日本は87.1人と大幅に少ないことがわかります。

これらのデータから、医療現場の看護師需要に対し、日本の看護師の人材供給は世界的にみても不足しているといえるでしょう。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「平成 30 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ案(概要)」

看護師不足はなぜ起きるのか?

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医療提供体制を支えるエッセンシャルワーカーの一種である看護師ですが、なぜ人材不足が起きるのでしょうか。原因として考えられるのは以下の2点です。

女性看護師の離職

看護師の視点に立つと、離職による人材の減少が原因の1つに挙げられます。

看護師(正規雇用看護職員)の離職率は、過去10年間で11%前後を維持しており、一般労働者の離職率と大きく変わりません。

しかし看護師の場合、一度離職した後の復職率が低い特徴があります。

一般的に働く女性は30歳代で離職後、30歳代後半~40歳代に復職する傾向が明らかになっていますが、看護職の場合はそのまま戻らないケースが多いのです。

復職しない理由としては、家事・育児や家族の健康問題、介護や看護業務からはなれていたことによる不安などで就業する意思を失ったという調査結果が厚生労働省から出ています。

看護師は男性も年々少しずつ増えていますが、いまだ女性が9割を超える職種であるため、女性職員の離職によって十分な人材が確保しにくい側面があります。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果 資料2」
厚生労働省「コメディカル不足に関して ~看護師の人数と教育~ 看護師の人数と教育」
日本看護協会「2020 年 病院看護実態調査」 結果

医療ニーズの拡大・多様化

看護師が活躍する医療現場におけるニーズの拡大・多様化は、看護師不足の主要な原因とされています。

まず日本の病床数は、生活習慣病などの慢性疾病の増加や高齢化の進行などの時代背景により、他国と比較して突出しています。

また医療と福祉の一体化が進み、看護師を必要とする場所が医療機関だけでなく、介護施設や在宅看護なども含まれるようになりました。

つまり、療養病床(長期的に医療ケアが必要な要介護者のための病床)も含め、看護師がつくべき病床の増加により、供給が追いつかないほどに需要が高まっているのです。

▼参考資料はコチラ
日本医師会総合政策研究機構「日本の病床数」

2025年に看護師の需要がピークに?

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看護師不足問題の重要なキーワードとなるのが「2025年」です。

厚生労働省によれば、2025年の看護師必要数は188万人~202万人とされ、最大で27万人の看護師が不足する可能性を示唆しています。

この推定は、現在進行中の病床削減政策「地域医療構想」の実現が想定に入っているため、病床を削減したうえでも看護師は不足する可能性が高いのです。

2025年を境に次の2つの動きが予測されていることが背景として挙げられます。

2025年に看護師不足が深刻化する背景

  • ・病床を削減する代わりに訪問看護の需要が伸びる予測が立っている
  • ・団塊の世代が75歳以上になり医療・介護を必要とする高齢者が急増する

2025年時点で病院やクリニックでの看護師需要は大きく変わらない一方、訪問看護における需要は2016年の2.5~2.7倍、介護保険サービスにおける需要は2016年の1.3~1.4倍になるといわれています。

2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大による医療需要の急速な拡大も手伝い、看護師の確保は喫緊の課題として国から認識されているのです。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ案(概要)」

現場の看護師の働き方や給与への影響は?

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看護師不足は現実問題として起きており、2025年に向けて国を挙げての対策が必要な課題であることは間違いありません。

では、現場で働く看護師にとって、看護師不足は働き方や給与にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

働き方への影響

働き方への直接的な影響として、少ない供給で過剰な需要をまかなうため、夜勤や時間外労働といった形で看護師の負担が増加する可能性があります。とくに人口の多い都市部では大いにあり得るでしょう。

一方、持続可能な看護提供体制を構築するため、厚生労働省は勤務環境の改善やハラスメントの防止、離職者の復帰支援などにも注力する方針を示しており、看護師にとって働きやすい環境整備が期待されます。

また、ITを医療に役立てる「メドテック(Medical(医療)×Technology(技術)」の観点で看護師の負担を軽減するアイデアにも注目です。

たとえば、ベッドからの移動をスムーズに行うことができる介護ロボットや、ウェアラブルデバイスなどを用いた検温や検査などが挙げられます。

今後メドテックの普及が進んでいけば看護師の日々の業務が軽減され、人間にしかできない患者さまに寄り添う看護に時間を使えるようになるでしょう。

給与への影響

一般的に生活や生命に関わる仕事は景気の影響を受けにくく、良くも悪くも看護師の給与は安定する傾向があります。

ただし、今後賃上げが実施される余地はあります。

2021年に閣議決定された「看護職員等処遇改善事業」では、新型コロナウイルス感染症の治療に対応する医療機関などに勤務する看護師を対象に、2022年2月から9月まで賃金を月4,000円引き上げる方針が示されました。

同事業は新型コロナへの対応にかかわらず、最前線で働く看護師を支援する目的があるため、今後より高まる看護師需要に応じた予算編成が組まれる可能性はあるでしょう。

▼参考資料はコチラ
日本看護協会「2025年に向けた看護の挑戦 看護の将来ビジョン」
厚生労働省「看護職員等処遇改善事業」

まとめ

看護師の労働人口は増えている一方、それを上回る医療現場での需要によって看護師不足が生じています。

2025年に待ち受ける急速な高齢化や病床削減による訪問看護の増加により、看護師の需要は今後さらに伸びるでしょう。

同時に、現場で働く看護師の負担を軽減する取り組みが官民一体で行われており、賃上げによる給与面での支援も並行しています。

コロナ禍のような一時的な危機が落ち着いた後(アフターコロナ)においても、こうした流れや動きは続くと予想され、看護師の市場価値はますます高まっていく見通しです。

ただし、クリニックの求人に関してはこれまで同様人気が高いため、注意が必要です(2022年1月現在)。病院や、その他医療施設と同じように応募しても、書類選考段階で落とされるケースもあります。クリニックへの転職を検討している方は十分に対策を練ってから選考に進むようにしましょう。

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