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【2022年2月開始】看護師の賃上げの背景や変更点を解説

記事掲載日:2022/01/11

【2022年2月開始】看護師の賃上げの背景や変更点を解説

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、医療機関では徹底した対策が求められ、疲弊する医師や看護師も増えてきています。

そんななか、岸田政権は看護師の待遇の改善を図るため、2022年2月から賃上げを実施する方針を発表しました。

日々懸命に働く看護師にとっては、今回の政策の動向が気になるのではないでしょうか。

今回の記事では、看護師の賃上げの背景や影響、問題点などを詳しく解説していきます。

2022年における賃上げの背景は?

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まずは、今回の看護師の賃上げに関する政策について概要を説明していきます。

2021年11月、政府は新型コロナウイルス感染症の治療に対応する医療機関で勤務する看護師を対象に、2022年2月から9月までの期間、月額4,000円の賃上げを行うことを発表しました。

この財源は2021年度補正予算より賄い、その後に関しては診療報酬で対応される予定です。

賃上げに至った背景

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、その対応に限界を感じた看護師の退職が増加しています。今回の賃上げは、こうした状況を改善するために実施されました。

保育士や介護職の賃上げ(月額9,000円程度)は先立って発表されていましたが、看護師については調整に難航したようです。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「看護職員等処遇改善事業」

看護師の賃上げによる収入の変化は?

今回の看護師の賃上げは、新型コロナウイルス感染症の治療に対応する医療機関勤務の看護師や准看護師が対象です。

前述の通り、2022年2月から月4,000円の収入アップが見込まれています。また、保育士や介護職と同様に看護師の賃金も現状の1%アップから段階的に3%まで引き上げるとされており、さらなる処遇改善が期待されます。今後は対象者の拡大についても検討が進む予定です。

看護師賃上げの課題

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今回政府が発表した看護師の賃上げに関して、様々な問題点が指摘されています。主な課題点は、以下の通りです。

すべての看護師に対する賃上げではない

今回の賃上げの対象となるのは、「新型コロナウイルス感染症の治療に対応している医療機関勤務の看護師のみ」に限定されています。

治療に直接関わる看護師の負担はもちろん大きいものですが、新型コロナウイルス感染症の治療に直接関わっていない病院やクリニックなどで働く看護師も影響を受けています。今回の政策の対象とならなかったことで、不満を感じている看護師も少なくないでしょう。

賃上げの幅と労働量の変化が見合わない

新型コロナウイルス感染症の治療などに対応している看護師は、従来以上の激務を強いられています。心身ともに疲弊してストレスを抱える看護師に対し、月収の1%にあたる月4,000円の賃上げでは少なすぎるという声が多いのが現状です。

一方、他国の看護師に対する待遇は手厚いものとなっています。アメリカでは、看護師に対して年間数千ドルの賃上げを実施。フランスでも、医療従事者に対する月2.2万円の賃上げに合意しました。こうしたことを考えると、今回の日本政府の対応に失望した看護師も多く見られるでしょう。

ほかの職種との格差

介護職や保育士などの賃上げにおける引き上げ幅は、月収の3%程度にあたる月9,000円です。一方、看護師は月収の1%程度にあたる月4,000円の賃上げに留まっています。

しかし、看護師は人の命を預かるため責任も重く、夜勤など体力的にも負担の大きい職種です。そのため、激務に対して賃金が見合わないと感じている人も多いでしょう。

看護師の給料は高い?

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保育・介護・看護といった「エッセンシャルワーカー(必要不可欠な労働者)」の重労働や低賃金は、社会的にも問題視され、改善策を政府が検討しています。

しかし、介護職や保育士と比較して看護師の収入は高く、なかには看護師の賃上げは不要という声もあるようです。

実際に看護師の収入は高いのか、多職種の平均と比較してみましょう。

看護師の収入と一般的なサラリーマンの収入の比較

看護師の平均収入は、夜勤手当などを含めて月30万円程度といわれています。また、厚生労働省の調査によると、平均年収は約490万円程度です。

一般のサラリーマンの平均年収はおよそ430万円程度ですので、収入自体は平均程度かそれ以上であると言えます。しかし、一般的なサラリーマンの場合、看護師と違って当直や夜勤などの重労働はありません。労働量を考えると、看護師の収入は適正、もしくは低いと言えるのではないでしょうか。

看護師の収入と介護職・保育士の収入の比較

続いて、介護職・保育士の収入も確認してみましょう。

介護職の平均基本給は月20万円前後、ボーナスなども考慮した年収は350万円前後です。一般的なサラリーマンの平均年収と比較すると、介護職は収入が低いといえるでしょう。

また、保育士の平均年収は約360万円程度。こちらも一般的なサラリーマンよりも低い水準となっています。

しかし、介護職・保育士・看護師はどれも人材難や低収入が指摘されている職種です。介護職や看護師は高齢化で需要が高まっているため、今後も待遇改善のための政策が検討されるでしょう。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
厚生労働省「保育士の現状と主な取組」

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響により、看護師をはじめとする医療従事者の負担は特に大きくなりました。政府は、こうした状況を受けて、看護師の待遇改善について検討を続けています。

以前より、高齢化で医療分野のニーズは高まっていました。今後の看護師の人材確保といった意味でも、待遇改善は急務と言えるでしょう。

▼ナースステップについて詳しくはコチラ
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