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診療看護師(NP:ナースプラクティショナー)とは?仕事内容や給料相場を解説

記事掲載日:2021/05/24

診療看護師(NP:ナースプラクティショナー)とは?仕事内容や給料相場を解説

診療看護師(NP:ナースプラクティショナー)という言葉はご存じでしょうか?看護師にとって数多くあるキャリアアップの方法のなかで、最も難しいもののひとつだと言われています。資格取得が難しいため、より活躍したい・キャリアアップを目指したい看護師にはぴったりな職種といえるでしょう。

今回は診療看護師に焦点をあて、できる仕事の範囲や気になる給料相場などを徹底解説します。

診療看護師(NP)とは

診療看護師は、本来は医師が実施する診療行為を一定の範囲内において単独で行える看護師です。英語ではNurse Practitioner(ナースプラクティショナー)と呼ばれ、NPとも略されます。日本では診療看護師と表記されるのが一般的です。

特定行為には、気管カニューレの交換や、末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入、インシュリンの投与量の調整など21区分38行為にもおよびます。

高齢化社会による医療ニーズの増加、そして医師不足が叫ばれている現代で、診療看護師への期待が高まっているといえるでしょう。

一般社団法人・日本看護系大学協議会(JANPU)では、高い専門性と優れた看護実践能力を持つ看護職者である「高度実践看護師(APN:Advanced Practice Nurse)」のひとつです。なお、高度実践看護師には14の専門分野がある「専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)」という資格もあります。

日本とアメリカでは診療看護師の意味が異なる

診療看護師は、もともとアメリカでスタートした制度です。医師がいない僻地において、医療を担保するために設けられました。

日本の診療看護師とのもっとも大きな違いは、裁量権の広さです。アメリカの診療看護師は初期診療による診断、処方や投薬、そして医師の手順書がなくても手術以外の医療行為を行えます。また開業も可能です。

診療看護師が注目されている背景

総務省によると、日本の総人口は年々減少してきており、この動きは続くという予想を立てています。人口減少に拍車がかかる日本では、医療提供体制の再構築が目下の課題となっています。そのなかのひとつがタスクシフティングです。タスクシフティングとは、医師への業務集中を回避する考えとそのための取り組みになります。

厚生労働省が管轄し、2021年4月8日に可決された「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」における重要な項目のひとつです。

効率的・効果的な医療を提供するために医師の業務の一部を分散する上で、診療看護師は重要な役割を担います。

▼参考資料はコチラ
総務省『統計局ホームページ/人口推計(令和3年(2021年)11月確定値,令和4年(2022年)4月概算値) (2022年4月20日公表)』
厚生労働省『良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について』

診療看護師(NP)の仕事内容

診療看護師は、具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。主な仕事内容をチェックしていきましょう。

医師の直接指示による診療の補助

医師の直接指示による診療の補助です。通常の看護師も行っている業務内容です。医師から直接指示を受けて患者への採血や静脈注射、点滴、投薬、医療機器の操作、各種の処置などを行います。治療がスムーズに進むように、医師の診察・診療をサポートします。

医師の手順書に基づく特定行為

前述した特定行為です。特定行為は診療看護師の資格をもった者以外は行えません。決められた範囲ではあるものの、医師による直接指示を待たずに処置ができるので、患者にとっては大きなメリットとなるでしょう。

医師と看護師をつなぐ

診療看護師には医学や看護に関する豊富な知識とスキル、そして経験が求められます。現場の看護師からは相談がしやすく、頼りになる存在と思われていることも少なくありません。医師と現場の看護師がうまく連携をして業務が進むように、両者をつなぐ役割も期待されています。

看護師の教育

豊富な現場経験年数をもっていることから、経験年数の少ない看護師の教育を担うこともあります。

診療看護師(NP)になる方法

続いて、診療看護師になるための方法をご紹介します。一般的には次の3ステップで取得することが可能です。なお、日本看護系大学協議会認定の資格を取得する場合は3年以上、専門とする特定分野の経験がなくてはなりません。

1:看護師としての実務経験を5年以上積む

まずは、看護師として5年以上の実務経験が必要です。

2:大学院に2年間在籍し、卒業する

実務経験を5年以上積んだら大学院へ進学し、修了する必要があります。2022年5月現在、大学院は日本看護系大学協議会や、一般社団法人・日本NP教育大学院協議会(JONPF)などが認定する教育課程を実施する教育機関に限られています。2022年5月現在、日本看護系大学協議会が認定する「プライマリケア看護専攻教育課程」のある大学院は5校、日本NP教育大学院協議会が認定している大学院は全国に13校あります。カリキュラムは医学や看護学、特定行為についてなどです。

フルタイムで通う必要があることから、看護師の仕事を続けながら通うのは難しいでしょう。退職や休職をして通うことになります。

3:認定試験に合格する

大学院を無事に修了したら、認定試験を受けます。日本NP教育大学院協議会の場合、試験は筆記のみです。「プライマリ・ケア(成人・老年)」、「プライマリ・ケア(小児)」、「クリティカル」の各領域からひとつを選択して受験します。

試験に合格すると国立病院機構に診療看護師として認定され、認定看護師として働くことが可能です。ただし、資格は5年ごとに更新しなければなりません。更新には試験や研修などは不要で、認定看護師としての実績や労働時間を申請するだけで大丈夫です。

JANPUの場合は書類審査と面接審査によって合否が決まります。書類審査では履歴書や大学院の修了証書、成績証明書などを送付します。書類審査を通過すると、30分の面接審査に進みます。面接審査の内容は以下になります。

15分間で、受験者自身の看護実践例もしくは実習中の実践事例(急性疾患への初期対応、慢性疾患の悪化予防・治療的介入、医療安全および倫理的課題への介入、地域における予防的介入等)について口頭で発表する。残りの15分間は発表内容に対する質疑応答を行う。

一般社団法人 日本看護系大学協議会『2022年度 日本看護系大学協議会 ナースプラクティショナー 資格認定審査(第4回)について』より引用

▼参考資料はコチラ
一般社団法人 日本NP教育大学院協議会『会員校紹介 | 大学院の皆様』
一般社団法人 日本看護系大学協議会『2022年度 日本看護系大学協議会 ナースプラクティショナー 資格認定審査(第4回)について』

診療看護師(NP)の給料相場

最後に診療看護師の気になる給料相場をみていきましょう。当サイトが求人情報を調査したところ、正社員求人で月収は34万円~44万円ほどが相場でした。

多くの医療機関では通常の看護師給与に、診療看護師の資格手当をプラスする給与形態を採用しています。資格手当は約5万円~6万円です。つまり看護師よりも5万円~6万円ほど、月収が高くなります。夜勤手当がつく場合は、さらに月収が上がっていくでしょう。

まとめ

診療看護師の資格取得のために、大学院へ2年間通う必要があるのはたしかに大変です。しかし高度な知識とスキルを習得し、看護師としての裁量が広がることは、大きなキャリアアップとなることでしょう。

JANPU、日本NP教育大学院協議会、公益社団法人日本看護協会は現在、日本の診療看護師をアメリカのナースプラクティショナー制度と同様の裁量を持つ国家資格へするために協働しています。今後の動向次第によっては、看護師のキャリアプランへ大きな影響を与えるかもしれません。

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▼参考資料はコチラ
日本看護協会『ナース・プラクティショナー(仮称)制度の構築』